武勇伝は聞き飽きていたから
大手企業に長く勤めていると、社内には色々な人がいるということが当たり前になっているのですが、それは恵まれたことであるのを忘れてしまいがちです。
何が恵まれているかというと、経験した先輩方の話を聞けるチャンスが多いからです。
中には、偉そうに何度も武勇伝を語ってくる人もいるため、いつしかサラリーマンの昔話を聞かなくなってしまったのですが、中小企業で働いてみると、本当に情報が少ないことに驚きます。
インターネットに情報が溢れているので、問題ないという意見もありますが、実際に経験してきた人の意見というのは、とても貴重なものです。
特に、ものづくりにおける、現場でのできごとや設計のノウハウなどは、インターネットで見た情報であっても、信ぴょう性がわからず、人から聞いてみて初めて「やっぱりそうですよね」と、情報を受け入れるようになるのです。
転職社会で技術の底上げを期待
大手企業でも、この数年の転職ブームがあいまって、情報の交流が盛んになってきています。
経験の浅い社会人だけでなく、10年以上のキャリアを持った人の転職も盛んなので、情報やノウハウがブラッシュアップされてきていると感じます。
特に、技術者の転職がもっと増えてくれば、ひと昔前には考えられなかったような、技術や品質の底上げが期待できるかと思っています。
しかし、現状では、コンプライアンスや機密保持の観点から、一人の技術者が転職先で、前職の情報を開示することはタブーとされているので、あまり底上げにはなっていません。
情報は溢れているので、ほとんどの技術的な情報はインターネットを調べれば入手することは可能なのだから、もっと技術者はベラベラと過去の経験を伝えていくべきなのです。
もちろん、新製品の開発状況や営業的な顧客情報など、機密にしなければいけない情報を言うことはNGですが、私が主張するのは、もっと細かいノウハウであったり、そんなこと言っても何の得にもならないような、設計ミスの体験談とか、そういう内容です。
意外と、未経験者が知りたいのは、細かい仕事のやり方だったりするからです。
経験したことが価値になる
転職から独立していこうと考えたとき、「あなたの事業の強みは何か」と言われたら、20年以上もものづくりに携わってきたのだから、やはり「経験」が強みになると考えています。
ただ、経験が強みになるためには、「伝えられなければ意味がない」ということを、しっかりと意識していかなければなりません。
個人が経験したことなんて、すごくちっぽけではあるのですが、意外と経験したことが価値になるもんだな、というのも中小企業に転職してみて感じたことです。
大袈裟に言ってしまえば、「経験を価値につなげる」これが私の残りの人生のテーマになりそうです。