出雲にて
縁結びの神様として名高い出雲大社ですが、国譲りの神話を伝えるものであることも有名です。国を譲ったオオクニヌシのために大きな神殿を建てた、というのが由来というのですから、一度は行って神話の世界を感じてみたい、そう思っていました。
神話というのは、適当な作り話のように思いますが、全くのフィクションというケースは少なく、何かしらの出来事や言い伝えを時々の政権者が都合の良いようにでっち上げる、いわゆる盛った話に言い換えていると言われています。
出雲大社にも、因幡の白兎など、当時の言い伝えが残っている場所がいくつかあるので、訪れた際には、古事記や日本書紀のガイド本を持ち歩いて旅をするのも良いかと思います。
実は、この記事を書いているのは、そんな出雲に出張で来ているホテルなのですが、どうやら今回は観光はできずに帰ることになりそうです。それでも、出雲で感じたあることについて書き記したいと思います。
ボードゲームの歴史
話は、出雲からボードゲームになっていまうのですが、皆さん、チェスと将棋の違いをご存じでしょうか?
基本的なルールはほとんど同じで、インド辺りで生まれたゲームが西洋に伝わったものがチェス、東に伝わったのが将棋、と言われています。
似た面がある一方で、取った駒の扱いに関するルールが大きく異なる点となります。小さいころから将棋に慣れ親しんだ私にとっては、その違いを知った時には衝撃的でした。チェスは取った駒は盤上から除外し、そのまま終了まで使用しないというのです。
もともと戦争ゲームとして発展してきた両ゲームですが、取った駒を使わないチェスに対して、自分の戦闘員として取った駒を使えるのが将棋となります。西洋の人から見たら、敵の戦闘員が味方となるという考えの方が衝撃的なのでしょう。
怨霊や祟りを恐れる日本人の宗教観からきているという説もあるようなのですが、追いやった敵国の神様のために大きな神殿を建てたという神話の他にも、戦国時代には敵に塩を送ったというエピソードもあります。敵ながらあっぱれ的な発想は、日本人独特な感性なのではないかと思います。
少年ジャンプ
私個人としては、敵ながらあっぱれ、という精神を最も培ったのは、小さいころに読んでいた少年ジャンプの漫画の影響が大いにあると感じています。友情をコンセプトとしたジャンプなので、当然と言えば当然なのですが、今思い返しても、ほとんどの漫画が敵が味方になっていくストーリーなのです。
私が一番ジャンプにはまった時期の漫画を挙げてみますと、キャプテン翼、キン肉マン、ドラゴンボール、魁男塾、ろくでなしブルース、見事にどれも昨日の敵は今日の友、というストーリーです。
敵が仲間になっていく様子を感動的に描写していることもあるのか、妙に忘れにくく、セリフまで脳裏に深く刻まれてしまっているものもあります。
日本人の性質を理解して世界へ
古代日本から戦国時代、現代に至るまで、ゲームや漫画にまで浸透している、敵が味方になるという考え方・発想というのは私たち日本人の本能に組み込まれてしまっているものだと思います。
助け合いの精神だとか、敗者を称えるだとか、そんな綺麗ごとではなく、後で恨まれても困るから花を持たせてあげようとか、仲間に入れてあげよう、というような打算的な性質も含まれているかと思います。
良し悪しは別として、私たちは、こういった日本人の性質を理解して、海外と交流をするべきだと思います。我々の国民性はこうである、と伝えて理解してもらった方がコミュニケーションが深まったり、交渉が進んだりするものだと思うからです。
移動手段が発達した現代においても、出雲は都会から遠く、よくぞこんなところにと、来てみて改めて感じます。
都から遠く離れたこの地に追いやり、立派な神殿でも建ててあげれば、攻め返してくることはないだろう、時の政権者はそう思ったことでしょう。神話の世界を妄想しながら明日、帰路を楽しみたいと思います。