仕入れと販売
大手から中小企業にきて世の中の仕組みを肌で感じられることの一つに、支払いがあります。ものを仕入れて、それに付加価値を載せて販売する、その差額分が粗利である、ということは頭ではわかっていても、大手にいると部門ごとに分かれてしまっていて、全ての工程を確認することができないからです。
例えば、100万円で仕入れた事務機器を120万円で販売したとします。普通の大手企業であれば、営業が引合いを取ってきたタイミングで購買部に見積依頼をかけ、仕入先から入手した見積もりを元に、得意先への販売価格を決定して見積書を作成します。
営業が得意先から注文書を受けたら、購買部に発注依頼をかけて仕入先に注文書を発行します。仕入先から納品された機器を得意先に設置して検収があがれば請求書を発行します。得意先からの振込を確認しつつ、仕入先にも支払い振込をします。
端折った部分が多々あるものの、文章で説明すると長くなり、お金とモノの流れが分からなくなります。
大手で勤めていた時に、工場の原価計算や営業の見積作成、設計図面の購買発注など、それぞれの部門で一通りは経験していましたので、理解していたつもりでいました。
しかし、一連の流れを最初から最後まで見た経験はなかったので、仕入れと販売について、支払い完了までの流れを理解するまでに3ヵ月を要してしましました。
独立するために必要な簿記の知識
大手でなくて100人以上の中堅企業であっても、購買部、営業部、経理部と部門が分かれているため、引合い案件獲得から、仕入れ見積、支払い請求までを経験するサラリーマンは少ないことでしょう。
一方で、中小企業の社長の仕事の大半が支払い伝票の確認であると言われています。独立するためには、伝票のやり取りの終止を理解するだけでなく肌で感じて経験することが大切だと思います。
120万円の事務機器の支払を契約期日より1ヵ月早めるから金利の分だけ値引きしてほしい、というような交渉も月ごとの締めをきっちりやっている中小企業であれば、値引き額もすぐに出てくることでしょう。
大手で働いていると、金額ボリュームが大きいため、支払い遅れなどには無頓着になってしまいがちです。また規模の小さい企業を相手にする場合には、下請法にも関わってくるので、なおさら厳しいことは言わなくなります。
逆に、中小企業が大手を相手にする場合には、交渉の切り口として小さないちゃもんを付ける傾向にあるかと思います。簿記の知識がなければいちゃもんを付けることすらできませんので、大手からいきなり独立する際には、数か月でもいいので小さな会社で伝票処理の経験をつんでいくことをおすすめしたいです。
商売の始まり
大手で営業をしていた際に、買う買わないは別として見積は出しておけ、とベテラン営業マンによく言われたものです。
買おうとしているお客様に自社の製品を売るという営業テクニックもありますが、買おうとしていないお客様に購買意欲を与えて買おうという気持ちになってもらう営業テクニックも必要です。
もちろん、どちらのテクニックも使うことなく売れる仕組みを作れればそれに越したことはありませんが、基本的にはお客様に対して押したり引いたりして購入してもらうところまでたどり着けなくてはいけません。
作っては売れるという時代も過ぎて、確実性が高いのはお客様の悩みを聞いて解決策という商品を販売することが生業の基本的な姿であることは間違いありません。
一連の伝票処理の理解を深めるとともに、やはり大切なのは引合い案件の獲得と未来のお客様をたくさん作ること、そして一度顧客になったお客様に対しては、未来営業サポートをするという姿勢が最も大切なことと考えています。